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博士学生インターン体験記【川崎重工業株式会社】:モデルベース開発で“理論を「動く形」にする”

2026.05.22

私は、C-ENGINE(産学協働イノベーション人材育成協議会)の枠組みを活用し、川崎重工で約2ヶ月半の中期インターンシップを経験しました。

私は普段、車椅子マニピュレータの支援技術に関する研究に取り組んでいます。今回のインターンでは、そうした私の関心も踏まえて受け入れ先の方々とテーマを検討し、外乱環境下におけるロボットの安全性について取り組みました。開発現場で実際に用いられるV字プロセスを意識しながら開発を進め、最終的には実機検証まで経験することができました。

 

V字プロセスに沿った開発体験

以下、4つのフェーズを通じて、理論から実装、そして実機検証までを一貫して経験しました。

  1. 理論学習と要件設定: 論文精読を通じて数理モデルの意味を図で整理しながら、実装方針をメンターの方と一緒に検討しました
  2. MILS(モデル検証): MATLAB/Simulinkを用いて、目的に応じた詳細度のロボットモデルを作成し、外乱を含むシミュレーション環境を構築しました
  3. SILS(ソフトウェア検証): オートコード生成機能を積極的に活用し、設計した機能を独立したC++プログラムとして実装しました
  4. HILS・実機検証: 実機ローバーを用いた検証サイクルを回し、シミュレーション通りの安全機能が発揮されるかを確認しました

 

インターンシップを通じて得た気づき

・「モデルベース開発」の効率性と重要性

企業では、「まずモデル上で十分に検証してから実装する」ことで、手戻りを最小限に抑える開発の進め方が徹底されていました。なかでも、どの程度のモデル詳細度があれば十分な検証ができるのかを見極める判断は、開発の質と効率を左右する重要な要素であると学びました。

・専門外の人に伝える力の大切さ

このインターンで得た学びは、開発経験だけにとどまりませんでした。成果報告会の準備を通して、専門外の人にも伝わるように説明する技術の大切さを学びました。専門用語をできるだけ避け、「なぜこの研究に投資する価値があるのか」という視点を意識しました。また、図解やサンドイッチ法(結論→根拠→結論)を取り入れ、印象に残りやすいスライド構成を工夫しました。その結果、質疑応答では専門外の社員の方々とも建設的な議論を行うことができ、企業研究者にとって説明能力が極めて重要であることを痛感しました。

 

これからインターンシップを考える博士学生へのメッセージ

博士課程で培う「論文を読み解き、実装し、論理的に検証する力」は、企業のR&D現場で高く評価されます。みなさんが日々積み重ねている研究は、決してアカデミアの中だけに閉じたものではなく、社会実装や産業応用にもつながる大きな可能性を持っています。C-ENGINEのような枠組みを活用し、博士学生としての能力がどう社会に活かせるのかを肌で感じる体験を、ぜひ多くの学生に感じていただきたいです。

 

理工情報生命学術院システム情報工学研究群

エンパワーメント情報学プログラム

猪多 洋介

 

 

<川崎重工コメント>

企業における研究開発を体験してもらうため、猪多さんには実践的なプロセスのもと、実験設備を用いた制御ソフトウェア開発に取り組んでもらいました。文献調査から要件定義、設計、実装、検証に至るまで、モデルベース開発の一連の流れに取り組むタイトな日程でしたが、状況に応じて柔軟に対応し、最後までやり遂げてくれました。

これまで注力してきた領域とはやや異なるテーマでありながら、学習と実践の立ち上がりが早く、主体的に取り組む姿勢が印象的でした。また、新たに習得した技術をもとに、自身の研究や他案件への応用可能性についても積極的に提案・議論してくれ、受け入れ側としても多くの気づきを得る機会となりました。

成果報告会では、研究開発の意義を異なる分野の人に伝える難しさを実感した一方で、チームで進める企業内R&Dを体感する良い機会にもなったと思います。本インターンシップでの経験が、今後の研究活動や進路を考える上での一助になればうれしく思います。