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イベントのまとめと感想

未来の博士フェス2026 参加レポート

2026.10.05

  

2026年9月25日(金)に、文部科学省と経済産業省、科学技術振興機構共催の「未来の博士フェス2026」が、東京国際フォーラムで開催された。本イベントは、博士課程学生や企業、大学などの関係者が集まり、多角的な視点から博士人材の活躍を考えるイベントである。

 

◼︎博士人材の強みとは

本イベントを通じて、博士人材の強みは「問う力」にあると感じた。パネルディスカッションでは企業で活躍する博士人材や人事担当者が登壇した。「博士人材の価値や役割」のテーマでは、一貫して「問いを立て、それを探求すること」が博士人材の強みであると述べられていた。この議論から、博士課程学生が研究活動で経験してきた、課題を見いだし、問いを立て、解決に向けて探求する一連のプロセスは、企業で事業を進める上でも必要とされるのだと理解した。

博士課程学生は、研究を通じて自ら立てた問いを探求し、その成果を博士論文としてまとめ、独自の知見を示す。問いを立てるためには、学術上の未解明の課題や社会が抱える問題を、多角的な視点から捉える必要がある。過去にどのような研究が行われてきたのか、今わかっていないことは何か、社会に何が求められているのかなどを調べ、整理することが必要である。これには高い情報収集力と分析力、そして既存の知見を批判的に捉える論理的な思考力が求められる。博士人材の「問う力」とは、単に疑問を持つことではなく、既存の知見と未解明の課題を整理し、探求する価値があり、かつ検証可能な問いへと具体化する力である。

 

◼︎アカデミアと企業の違いとは何か

研究活動で培われる「問う力」は、企業で事業を進める上でも必要とされる。では、アカデミアと企業では、その力の活かし方にどのような違いがあるのだろうか。両者には、問いを探求する目的や成果の評価基準に違いがあると考える。アカデミアでは、新たな知見を生み出し、学術的な理解を深めることが重視される。企業では、顧客や社会の課題に応え、事業として価値を生み出すことが重視される。そのため、同じ問いを扱う場合でも、探求する範囲や成果を求められる時間軸が異なることがある。したがって、博士人材が企業で力を発揮するためには、研究活動で培った「問う力」を、事業の目的や制約を踏まえて活用することが重要であると考える。何を明らかにするべきかに加え、それを明らかにすることが誰にとってどのような価値を持つのかを考えることが、研究経験を事業につなげる上で必要なのではないだろうか。

 

◼︎参加して感じたこと

最も印象に残ったのは、アカデミックポジションが少ないという理由で企業への就職を促しているのではなく、博士課程で培われた能力を持つ人材を社会が求めているという点であった。正直なところ、これまでは企業への就職を、アカデミアのポジションを得ることが難しい場合の選択肢として捉えていた。しかし、今回の講演やパネルディスカッションを通じて、博士人材が活躍できる場は大学や研究機関に限らず、企業にも広がっていることを知り、自身の進路をより広い視野で考えるきっかけとなった。特に、研究活動を通じて培ってきた「問う力」が、企業での課題発見や解決にも活かされるという点は、自身の研究経験の価値を捉え直す機会となった。今後は、所属先だけで進路を考えるのではなく、自分がどのような課題に取り組み、培ってきた能力を通じてどのような価値を生み出したいのかを軸に、将来の選択肢を考えていきたい。

 

 

平野陸(ひらのりく)

(筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群 博士後期課程4年)