TOPICS

トピックス

筑波大学の研究室紹介

【融合知能デザイン研究室】ヒトとAIのタッグが世界を救う⁉―「融合知能」で世界的課題に立ち向かう―

2022.04.05

融合知能デザイン研究室

担当教員: 森嶋 厚行教授、松原 正樹准教授、伊藤 寛祥助教

Site: https://fusioncomplab.org/index.html

2017年立ち上げの、AI+人間+ビッグデータによる融合知能の研究を進める新しい研究室。人類が直面する困難な問題を解決するために、人類と計算機の知を結集して立ち向かうことを至上命題とし、AIと人類のネットワークを構築すること、また両者の協力により創出される「融合知能」をデザインする科学技術を確立することを目的としている。学生自ら様々な研究プログラムを作成してそれを実験に移し、どのような結果が得られるかを観測するという、研究上の知見を積極的に社会実装する動きが非常に強い点が当研究室の特色である。

【博士インタビュー】
図書館情報メディア研究科 図書館情報メディア専攻
博士後期課程3年
小林 正樹さん

Q:研究室に入ったきっかけは何でしたか?

小林さん:学類生時代、知識情報・図書館学類独自の集中授業である「知的探求の世界」を受講し、今とは異なる研究室で国内の学会で発表するための研究をしていました。とても大変な作業でしたが、文章力や論理的な説得力が磨かれた時間になりました。一方で、当時はデータサイエンス分野が流行していて、私もデータ分析に関する研究を行っていたのですがあまり得意ではありませんでした。そのため、卒業研究のための研究室をどうするか考える時期になったときに「自分が得意なWebプログラミングを使って研究したい」という思いが浮かんだのです。そうして研究室を探したところ、自分達でクラウドソーシングプラットフォーム(Webアプリケーション)を作って実験することができる森嶋先生の研究室を発見しました。
こうした流れで卒業研究を担当していただいたのですが、そこで修士のときに国際学会で発表する機会がありました。簡単に「発表」と言ってもそれは難しいことで、プログラミングができるだけでは駄目だということも分かりました。当初は大学院に進むことを考えていなかったのですが、研究を続けるなかでより高度な文章力を身につけることができれば、プログラミングスキルの向上にも研究者としての自分の価値づけにも有意義だと考えて、この研究室に身を置くことを決めました。

Q:研究室の雰囲気はどうですか?

小林さん:今は研究室に集まれませんが、コロナ禍以前は皆で研究室に集まって色々な話をしていました。ゼミが盛んに行われているのはもちろんのこと、研究室スタッフの方やシステム運用を手伝ってくださる方もいて、コミュニケーションがとても活発な研究室だと思います。そのため、話すことに苦手意識がある人にとってはすこし大変かもしれません。私自身もひとと話すことは得意でなかったのですが……研究室で同期と話したり、スタッフの方に事務手続きのことなどで質問したりする中で段々と慣れていって、今では研究室が居心地よく感じられています。

Q:どんな研究をしていますか?また生活の中でどのようにそれが活かされていると感じますか?

小林さん:クラウドソーシングと機械学習を組み合わせて、人間とAI両者の知能を活かして課題解決を行うシステムを構築する、という研究をしています。例えば、クレジットカード利用画面などで歪んだ文字の入力を求められることがあると思います。実は、この歪んだ文字のうち半分が計算処理機では認識できなかった文字であり、「片方を正しく入力しているから人間が入力しているだろう」という信頼に基づいてデータを集めているのです。もう少し詳しく言うと、機械に仕事を学習させるにはデータが必要となりますが、より正確な仕事を遂行するためには「それを学習させるためのデータ」が大量に必要となります。このような、現時点では計算機による処理が困難な課題には人間による情報処理(ヒューマンコンピュテーション)が不可欠ですが、どこからどこまでを機械が(もしくは人間が)やるかという線引きを、課題や作業品質の要件に応じて動的に計算することができれば、業務をより効率的・効果的に遂行できるようになります。

Q:研究室外での交流はありますか?

小林さん:卒業研究からの同期は皆、修士課程修了後に就職した社会人ですが、今でも連絡を取っています。社会実装を前提とした共同研究を積極的に進めているので、外部の先生や企業の方との交流を頻繁に行っていますし、就職につながったアルバイト先の人とも話したりしていて、予想より広範なコミュニケーションをとっていると思います。外との交流を持つこと
で研究に閉じこもりすぎないようにしたり、「役に立つ研究は何か」を考えたりするきっかけをもらっています。

Q:博士後期課程学生の持つ強みとは何だと思いますか。

小林さん:深い専門知識はもちろんのこと、論理的な説得力や文章力が強みのひとつになると思います。これは論文を作成したり、ゼミで議論したりする中でこそ身に付く能力でしょう。また、それ以上に重要なのは、博士後期の学生は「新しい価値を生み出す能力」が担保されているということだと思います。研究というのは、過去の実績の上に新たな課題、言いかえると未解決の問題を発見して、それをどのように解決するかを論理的に実証するというプロセスの繰り返しだと言えます。博士後期の学生はこうしたプロセスを通じて、「新しい価値を創り出す能力」を鍛えている最中なのではないでしょうか。

Q:Q4の「アルバイトが就職につながった」という点と、今後のキャリアの展望についてどのように考えているかぜひ教えてください。

小林さん:Q1ですこしお話ししましたが、学類生のころから企業で働くことを考えていたので、大学院への進学は私の進路の候補にはないものでした。ただ、同期全員が修士課程に進むこと、大学院で身につけられることを考えてみたときに「行った方がよさそうだな」と思ったので決めました。
一方で、今度の春から、深層学習とロボティクスを活用した課題解決を主な事業とするベンチャー企業に勤めることが決まっています。実は、修士(博士前期課程)学生のころからこの会社でアルバイトとして働き続けていて、正社員として働く運びになったというところです。そこはとても優秀な方が多く、自分の研究分野とプログラミングを存分に活かすこともできるので魅力的でした。今後のキャリアについては、おそらく働いているうちに自分は何がやりたいかとか、また研究したいなとか何かしら変化があると思うので、それに応じて研究と開発の世界を行き来するのが理想です。

【インタビュー後記】
「大学院に進み研究を深めるなかで、身につけることのできる能力がある。」
この利点をもって院進を決めたと小林さんは教えてくれましたが、そのような進路の決め方をする学生は実のところあまり多くないかもしれません。


好きな研究を続けることができるのはもちろんのこと。
文章力の向上、論理的な思考回路の形成、課題を発見し解決に導くまでの方途を考案する能力……実は、専門知識以外にも、大学院だからこそ培える様々な能力があるのです!

しかも、大学院で培われる能力には「コンピテンシー」「トランスファラブルスキル」といった、社会的に活躍するうえで必要な知識として位置づけられるものも多数存在しています。
つまり、高度な専門知識を持つ<大学院生>が、社会的に希求され始めているのです。



徐々にではありますが、若手研究者の活躍の場は決してアカデミアだけに留まるものではなくなっています。
本インタビュー記事が皆さん自身の将来について、新たな視点をもたらすきっかけとなるように祈ります。
(たかとら)