TOPICS
マッチングストーリー
フランス哲学×IT企業【インターンシップ】
2024.03.13
フランス哲学を学ぶ博士後期課程の学生が、プロジェクト推進支援やナレッジ・マネジメント、独自クラウドツールの開発や提供などを行う企業とマッチングしました!
哲学者としての素養を生かした議論や議事録作成のほかに、アプリ開発といったIT・情報に関する業務にも携わるなど、これまでの経験や独学で得た知識をもって活躍した好事例です。
PhD×FUTURE.を通して生まれた偶発的な出会いの物語を、Q&A形式でご覧ください。
●若手研究者について●
ニックネーム
すたんぷ
所属
人文社会ビジネス科学学術院人文社会科学研究群人文学学位プログラム現代文化学サブプログラム
主指導教員
廣瀬浩司教授

写真:すたんぷさん本人
●マッチング概要●
種類
インターンシップ
企業
株式会社コパイロツト
時期
2022年11月から2023年8月まで
●Q
まずは自己紹介をお願いします。
●A
フランス哲学を専攻しており、現在は博士論文を執筆中です。
子どもの頃からアラブ地域の文化がとても好きで、アラブ研究や文学、心理学などの研究をしたいと思っていました。進路に迷ったとき、構築された文章や作られた世界観を通じて人間の心性をより深く知りたいと考え、人文学類の哲学・宗教学コースに進学することを決めました。
現在は博士後期課程でフランス哲学の研究に加えて、フランス語やラテン語なども勉強しています。
●Q
PhD×FUTURE.を利用してマッチングした企業について教えてください。
●A
「株式会社コパイロツト」は、プロジェクト推進支援やナレッジ・マネジメント、独自のプロジェクト推進用ツールの開発や提供などを行っている企業です。
インターンに参加した期間は、2022年11月から2023年8月までです。勤務時間は週2日相当のフルタイムで、月額10万円で活動する契約となりました。また、別途必要に応じて交通費が支給されました。
●Q
長期間のインターンになりましたが、内容について詳しく教えてください。
●A
私が参加したプロジェクトでは、研究開発プロジェクトのメンバーの方と一緒に、論文の読解や共有、議論や実践を通して、アカデミックな活動と企業への概念実装を橋渡しする方法を検討しました。その他にも、ツールの開発と研究、プロジェクトマネジメントの方法論を開発するプロジェクトに携わり、議論に参加したり、議事録を執筆したりしました。
より具体的な内容として、開発ツールの日本語添削やアプリケーションのデバッグ、UIの改善も行いました。また、私が携わったあるプロジェクトでは、教育事業として受講者と一緒にプロジェクトを作る体験型プログラムに、企画立案の段階から取り組みました。
●Q
一般的な業務だけでなく、企画立案から取り組むこともできたのですね。貴重な経験だと思いますが、実際に参加してみた感想を教えてください。
●A
一言でいうと、新鮮で面白かったです。
プロジェクトマネジメントのスキルを身につけるのみならず、体現したい概念をひとつのプロジェクトを通して実装する方法や考え方、プロセスについてとても勉強になりました。さらに、議論の過程で生じた問題にどのようにしてアプローチしたら良いかという、目的に合わせたチームでの立ち振る舞いや話し方、論理の組み立て方といった一般的なスキルも身についたように感じます。
これらはアカデミックな場で必要なスキルと強い相関関係があり、お互いに求めている有用な部分があるのだという発見になりました。ただ、短時間でフレキシブルに様々な業務をこなさなければならなかったので、全員の日程調整の結果、会議が夜7時に入ったときは辛かったですね(笑)。
●Q
俗に言う「トランスファラブルスキル」の熟達が、アカデミックな場でも有益であるという言葉を聞いて、目が開かれる思いです。ちなみに、ご自身の研究テーマと業務にはどのような繋がりがありましたか?
●A
直接の因果関係はありませんが、相関的に良い影響があったと思います。プロジェクト研究に携わり、哲学とは異なる分野の人と議論をすることによって、哲学者としての視点について反省的に考え直す機会になりました。特に私が専門としている哲学は、哲学的思考単体では成立しない学問なので、他の分野との対話をする機会ができてよかったです。
●Q
他分野との出会いが学問における視座をさらに深める契機になったのですね。少し話は逸れますが、これまでIT・情報に関するエピソードが聞かれませんでした。
●A
実は、小学生のころからブラインドタッチができるくらいパソコンを触るのが好きでした。
現在はデジタルサービスに興味を持っているのですが、最近は「人類がそれを十分に使いこなせていないのではないか」という問題意識があります。リモートワークと対面にはそれぞれ利点と欠点がありますが、それを差し引いても、対面の方がより良いと感じる一部の人は、リモート技術を使いこなせていないからそう感じているのではないでしょうか。
別の視点では、仏教学や文学などではデジタル化がどんどん進んでいて、文献をデジタル化してアーカイブすることで検索や調査がしやすくなっています。また、大学院生として研究を進めるなかで、ITツールに精通していないために見逃してしまう情報がたくさんありました。なので、どうしたらもっと上手くデジタル技術を使いこなし、楽に研究を進められるのかということに関心を持っています。今ではキャリアパスや就職活動を見据える機会があったこともあり、データ分析やプログラミングの勉強をしています。
●Q
どのように勉強されているのでしょうか?
●A
勉強については、まず初めにWebサイトや本を見て関心領域となる統計学やAIについての最低限の知識を調べました。それから、YouTubeやWebサイトを探して、実際にいくつかのツールを開発してみました。これからも、必要に応じて不足している知識を調べつつ開発力をのばしていきたいと思っています。
●Q
幼少期に抱いた興味・関心を出発点として、現時点のマッチングに至るまでのプロセスを見せていただきました。本インターンが就職活動やキャリア形成に与えている影響があればぜひ教えてください。
●A
就職活動には自己分析がつきものですが、インターンシップを通じて、いろいろな人の多様なキャリアパスに触れて、自分自身の強みや苦手な部分を自覚的に認識し、それをある程度は活用できるようになった点に影響があります。
就職活動はインターンシップと並行して進めていたので、インターンシップで得た気づきを実行するようにしていました。たとえば、哲学研究を通じて文献を読み解く訓練をしてきたこともあり、書かれた文章から筆者の背後にある目的や前提条件、その議論の利点と弱点を見極め、有機的に広げて多角的に解釈できることが自分の強みだと気づきました。これはインターン業務の会議中に、参加者の表現したい内容と言葉がうまく対応していないときに、その違和感を言語化して議論の進行を手助けできた経験がもとになっている気づきです。自分の分野では誰しもが当たり前にやっているようなことでも、実は訓練の成果として活用しているものが意外とあるのだと学びました。
また、キャリアパスに関しては、将来的には専門的に学んだフランス語を使って大学などで副業をしたいと考えていたので、コパイロツトで博士課程に在籍している社員や、大学の非常勤講師やアドバイザーを務める社員の姿を見ることができてキャリア形成に参考になりました。インターンを通してこうした気づきや学びがあったおかげで、就職活動やキャリア形成に学んできたことを生かすため、学位だけでなく技術も身につけたり、学んだ外国語を実際に話せるようにしたりと、将来必要となるものを推定し逆算して準備することができるようになってきたのかもしれません。
●Q
まさに研究と仕事と生活が互いに重なり合い、調和していくような経験だったのですね。貴重なお話をありがとうございました。最後に、ご自身のキャリアに関する展望と、仲間である若手研究者へのメッセージをお願いします。
●A
キャリアの展望についてですが、私は自分の興味にしたがって、複数のキャリアを行き来できる人になりたいと思っています。
というのも、今研究している哲学やその過程で身についたフランス語やドイツ語、技術的関心から学んできたコンピューターに関する知識や技術は、すべて自分のなかで有機的に連関しています。また将来新たな関心が生まれるかもしれませんが、それもまた新たなつながりとなると思っています。なので、これらを組み合わせてアカデミックな世界も企業活動も楽しんで往復できる将来を描いています。もちろんどこまで実現できるかは未知数ですが。この姿が実現できたら、きっとそれぞれの分野に欠けていたけどあまり触れられてこなかったような問題や課題を掬い取り、なんらかの答えや解決策を示すことができるのではないかと思っています。
以上は私の今後の将来像ですが、ほかの方にはそれぞれに個別の将来像やこだわりがあるかと思います。私の知っている小さな世界に限っていえば、博士課程の学生は小さな集団のわりに、多様な生き方をしていると感じています。ただ悪い言い方をすれば、バラバラでまとまりがなく、同じような場所にいる人たちでも得手不得手が全く異なり、大多数に刺さる一般的な生き方や就職活動のロールモデル、助言が難しい集合です。つまりよくも悪くも、私たちは各人が個人プレーでキャリアを切り開かねばならない大変厄介な状況にさらされています。
だからこそ逆に、狭い既存の方法論にとらわれず、情報を共有し一つひとつの具体例から反省的に自分なりの一般規則を作り上げていくことが大切だと思います。博士課程の学生にとっては、このプロセス自体がある意味一つのモデル足りうると考えています。私が今提出する解は私にとってすら一時的なものにすぎません。とりあえず動いてみる、それから考えて軌道修正をする、という運動をまずは初めてみることが肝要だと思います。読者の皆さんから私自身の進路への反証や論駁、別の面白い筋道が示されることを期待しています。
|
Prev |
トピックス一覧に戻る |
Next |