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イベントのまとめと感想

未来の博士フェス2024(野村佳祐):どこでも博士人材は活躍できる‼

2024.07.23

2024年7月10日(水)『未来の博士フェス2024』に参加してきました!

一橋大学一橋講堂で開催されたこのイベントは、文科省を始めとする多くの企業・団体からゲストが呼ばれ、日本の博士支援を応援するものです。全国各地の博士学生や博士号取得者、博士人材を重視する企業・団体採用担当者と直接会って、研究やキャリアパスについて話を聞いたり、質問したりする事ができます。今年は現地参加に加えYouTube視聴(一部)が可能で、計500人以上が参加・視聴しました。

 

今回は、現役博士学生として参加した野村(博士後期課程2年)が、その模様と感想をお伝えしたいと思います。とても面白いイベントだったので、この記事を見て、来年参加してみたい、と思って頂けたら嬉しいです!

 

本イベントは、大きく分けて5つの内容で構成されています。

ここでは概要のみ示すので、参加者や参加企業についての詳細は以下のURL(公式HP)をご参照下さい。https://www.jst.go.jp/jisedai/mirainohakushi2024/index.html

 

  1. 博士学生によるショートプレゼンテーション

JST(科学技術振興機構:文科省傘下の国立研究開発法人)による生活費・研究費の支援を受ける博士学生の中から選ばれた6名が自己紹介・研究紹介を行い、産・官・学のコメンテーターからの質問に答える、という内容でした。

大学、研究分野、社会人経験の有無など、多様なバックグラウンドを持つ個性的な学生たちが登壇しました。いずれの学生も研究内容の社会実装を視野に入れているか、既にベンチャー・NPO等を立ち上げて社会実装を行っている人ばかりで、明確な将来の目標を持って主体的に研究を進めています。

一方で、その研究分野に強いこだわりがある、という人は比較的少なく、修了後は全く異なる研究をする、もしくは研究から離れる、という人が多い印象を受けました。イベント全体の趣旨が、「アカデミア以外のキャリアパスにも活きる能力を博士は持っている」ことを一般社会に向けてアピールすることだったからかもしれません。一方で、特定の分野にこだわりが強いこと(強烈な専門性)も博士の個性の一つで、そういう人も社会には一定数必要なので、来年以降、そのような人も登壇する機会があれば良いな、と感じました!

 

  1. 博士を大事にする企業ピッチコンテスト

博士を採用する6社が博士活用のリアルをプレゼン!採用後の博士人材はやはり研究領域での活躍が多いようで、専門性を活かす、というよりも、基礎的な発想力や論理的思考力などを評価して、裁量権の大きい役職に配置する企業が多かったです!

 

  1. ポスターセッション

JSTにより支援を受ける博士学生による研究紹介、企業・官公庁の人事担当者による説明会がポスターセッション形式で行われました!

筑波大学からは3名が発表しました(筆者もその1人)。

普段の学会とは違い、様々な分野の学生とそれぞれの研究について自由に質問・討論できて面白かったです。例えば、荒廃した土地の環境を再生する観点から、建築系の学生と微生物の話で盛り上がったりして、分野横断的な研究について一層深く考える良いきっかけになったと思います。

また企業の展示では、来場した学生たちでかなり盛り上がっていました。ただ、盛り上がり過ぎていて、担当者の声が聞こえる範囲まで筆者は近づけませんでした…。企業だけが目当ての学生にとっては、他の合同説明会の方が良いかもしれません。ただ、昨今の説明会・選考はオンラインが主流であり、対面で人事担当者に会える機会は貴重です。志望度の高い企業が出展していれば、そこにターゲットを絞って名刺交換などをして、顔と名前を覚えてもらうのもありだと思います。

一方で、「(学生向けに)博士を取ろう、(企業向けに)博士を採ろう」と唱えている文科省でも博士の採用を行っていて、文系・理系の博士が専門性を活かしながら活躍している、という話が印象的でした。

 

  1. 社会課題解決提案グランプリ

民間企業2社から出題された社会課題(以下①、②)それぞれについて、全国の大学から選ばれた博士学生のチームが解決策を提案し、優秀発表を競い合うグランプリが行われました。

  • アサヒクオリティアンドイノベーションズ(株)の課題:「人生120年時代の功罪、健康リテラシーの在り方はどうあるべきでしょうか?」
  • 楽天グループ(株)の課題:「サステナビリティの社会浸透とその加速 サステナブルなアクションを促進するための新しいAPPやサービスを設計!」

筆者も①の「健康リテラシー」に興味があったため応募し、幸運なことに参加がかないました。私のチームは、法学、教育学、微生物学、工学と幅広い分野の学生が集い、約1か月程度、散発的にオンラインミーティングを重ねて議論しました。それぞれの主張をうまく融合させることが難しかったですが、協調するだけでなく、時には批判してチームとしての主張を錬磨していく経験ができました。

議論すればするほど、社会課題の解決には多分野の観点が必須、ということを強く認識させられ、おそらく参加した博士学生全員にとって、自身の視野が広がる非常に良い学びの機会になったと思います!

 

  1. パネルディスカッション「博士人材が多様なフィールドで活躍する社会の実現を目指して」

最後に、それぞれ全く異なるところで勤めている(文科省、ポスドク→高校教諭、アカデミア、研究員・コンサル兼業、スタートアップ支援、ベンチャーキャピタル、世界銀行)博士号取得者パネラーによるディスカッションが行われました。博士時代の研究の専門性をそのまま生かすキャリアパスでなかったとしても、博士時代の経験やその過程で培ったスキル、博士号そのものが役に立つことが多いそうです。

※参加者の方の手書きメモがX(旧Twitter)に共有されていました。気になる方はチェックしてみてください(Dr. りけ子(@dr_rikeko)のポスト、https://twitter.com/dr_rikeko/status/1811031409445982651)。

 

イベント全体を通して言えることは……

多様なフィールドで博士は活躍できることに間違いない!ということです。

また来年開催された際には、ぜひ足を運んでみてください!!

 

 

【余談】

このイベントでは、博士が特定の研究にこだわりを持ち、学者として研究を続けることはステレオタイプであり、脱却しなければいけない、という意見が飛び交っていました。ただ、本当にそうなのか、私自身悩ましいところです。むしろ、研究にこだわるために博士に進んだ人も多いのではないでしょうか。

学者がいなければこの世界に生まれていない技術・考え方はたくさんあります。学者になる博士と、そうでない博士、どれくらいのバランスが社会にとって最適なのかは、時間的なスケールも踏まえながら継続して議論する余地があると思います。

次回開催時には、自分の感じた可能性に突き進む博士(例えば世界の第一線で活躍する研究者など)もパネラーとして呼んで、アカデミアを含めた真に「多様なフィールド」で活躍する博士同士での網羅的な議論ができることに期待します!

 

(生命地球科学研究群生命農学学位プログラム 博士後期課程2年 野村佳祐)
※2024年度博士後期課程学生支援プロジェクト採用者