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筑波大学の研究室紹介

【人工知能研究室】研究室は人材のサラダボウル!?―人工知能の敷衍と人間理解を目指して—

2022.07.06

人工知能研究室

担当教員: 鈴木 健嗣教授

Site: https://www.ai.iit.tsukuba.ac.jp/index-j.html

「人・情報の知能と機械の機能の融合」に向けた身体性と知情意の理解と工学的実現のため、人工知能の社会的応用と実装を主軸に研究活動を行う研究室。2006年度より活動が始まった研究室であり、工学以外の専門を修めたメンバーも在籍している多様さが、当該研究室の大きな特徴となっている。また、一般的な研究活動に加えて様々な学内外のプロジェクト等にも取り組んでいるが、それらの成果や研究室の動きがホームページから垣間見えるという透明性も特筆すべき点である。
研究キーワード:人工知能、サイバニクス、医工融合研究、ウェアラブル機器・ロボット、ソーシャルロボット、機械学習

【博士インタビュー】
理工情報生命学術院
システム情報工学研究群
知能機能システム学位プログラム
博士後期課程2年

松石 雄二朗さん

Q:松石さんは昨年度に医学博士号を取得したあと、そのまま続けて現在の研究室に進まれています。本インタビュー初の社会人博士である松石さんですが、鈴木先生の研究室にはどのようなきっかけで繋がったのでしょうか。

松石さん:2021年から看護学の教員を務めていますが、それまでは大学病院の集中治療室で働いていました。一般的に病院内では患者から医療者にコンタクトをとるシステム(ナースコール)が設けられていますが、電波の干渉を嫌う精密機器が多いこともあって、医療者間では電波を発しない「口頭での連絡・伝達」が行われていました。しかし、コロナ禍にあって病院内のシステムを変更せざるを得なくなり、感染を防ぐためにぶ厚い防護服を着る等の対策を施した結果、医療者間の連携に必要となる口頭でのコミュニケーションが困難になってしまったのです。そこで、精密機械に干渉しない安全な電波帯を用いた伝達システムが構築できないかと考え始め、その研究が可能であるような研究室を探すことにしました。折しも、スマートシティ計画で医学博士課程の指導教官とも繋がりを持っている鈴木健嗣先生を知り、ご相談する機会を持つことができ、それがきっかけで今に至ります。

Q:研究室の雰囲気はいかがですか。

松石さん:多様な人たちがいると感じています。自分も医学分野から来ている身ですが、本当に様々な背景を持った学生ばかりが集まっているので、研究室としてのまとまりが保たれていることに驚いています。特に、工学系の院生は自分とまったく違う視点を持っていますし、社会実装を前提に研究を進めている点でも新しい発見があって、とても面白いなと感じています。

Q:現代は「異分野協働研究の推進」が謳われていますが、まさに看護と工学をまたにかけた研究を実践されているんですね。話は変わりますが、実際のところ、働きながら研究するのは大変ではないですか?

松石さん:仕事と研究のふたつがあって2倍苦しいというよりも、片方で行き詰ったときもう片方が逃げ場になってくれるときがあるので、そういう意味で気持ちは楽ですね。仕事があるので研究の時間をたくさん取れるわけではないですが、どちらにしても自分の興味のあることを進めているので「苦しい」「大変だ」という思いはありません。仕事でも研究でも挫折するような出来事は少なからずありますが、あまりそこは深く考えずに「これも経験のうちかな」と思って適応したのが良かったのかもしれません。

Q:若手研究者が抱く思いとして「自分の研究に関わらない仕事はなるべくしたくない」というのがあります。松石さんは業務上の必要性から工学分野に足を踏み出したわけですが、そこに葛藤や不安は感じませんでしたか。

松石さん:学生のときもそうでしたが……「自分の目の前に解決すべき問題が如実に見えたのでそれをした」ということなのです。そのため、自分の研究課題は結構変わってきましたし、周りの人間からもそれを指摘されました。ですが、そこに葛藤や不安を感じるほどあまり深く考えこんではいません。もちろん研究では深く考えなくてはいけませんが(笑)

Q:翻って、博士後期課程学生が持つ強みとは何だと思いますか。

松石さん:高い専門性は絶対ですが、解決すべき問題を分析して、それを解決するまでのプロセスをロジカルに組み立てる能力は、基本的に一定のレベルを有していると思います。博士後期課程の学生は、これから社会でどのような仕事ができるのだろうと考えているかもしれませんが、社会人になると自分の考えをどう使うか試行錯誤することに面白さを感じるときがあります。いうなれば、私にとって研究は将棋を指すのと同じで「パズルを解く」感覚に近くて、これが解ければ困っている人たちが助かるな・状況が良くなるな、ということなのです。また、私は博士号というのはひとつのロジックを学んだ証明であると考えています。そう考えるとどんな分野であれ、自分の身に着けたロジックをもって働くことができるのではないでしょうか。

Q:今後のキャリアについて計画や展望があれば教えてください。

松石さん:このまま研究職を続けていくつもりではありますが、看護学以外の様々な分野の研究を取り入れて研究したいと考えています。コロナ禍に入ってからですが、看護学生を対象としたSNSでの配信を試みるなど、様々な媒体を使った看護学の知識の教育に努めています。また、自分自身について言えば、看護学だけではなく基礎研究医学や心理学も学んできましたし、いまでは人工知能の研究室に身を置いています。ある種場当たり的に生きていますが、これらはすべてその都度見えてきた問題を解決するために動いてきた結果だと言えます。これからは自分の持っている解決手段をもっと増やしていきたいと考えていますし、さまざまな領域の学問の良い部分を吸収しながら看護学を発展させていきたいとも考えております。

【インタビュー後記】
皆さんは今どんなふうに研究―もしくは仕事—に臨んでいますか?


今回PhD×FUTURE.の研究室紹介において初・社会人博士学生へのインタビューを敢行しました。
仕事と研究の両立は忙しくて大変だろう、自分だったら首は回らないのに目はぐるぐる回ってしまうだろう……
そう思って質問したのですが(cf.Q3)、松石さんは爽やかに「結構楽しいですよ」と答えてくださいました。

仕事も研究もあって忙しいけれど、やりたくてやっているから苦痛ではない。
むしろどちらかでつまずいたとき、もう片方が支えになってくれる場合がある。

それを聞いたとき、もしかしたら最近の私は業務(=やらなきゃ「いけない」事)に追われて、楽しんで働くことの面白さを見失っていたかもしれない――そう気づかされました。


あまり深く考えこまず、何事も自分の経験として受け入れてみること。
ひとつの居場所にだけこだわらず、<色んな自分>を持ってみること。
眼前に現れた課題が自分の課題だと認め、その解決に向かってみること。


要するに、溜まっている息を吐き切って、肩の力をふっと抜いてみることが大切なんですね。
「アウトプット」は私達自身にとって私達が思っている以上に必要なのかもしれません。


それぞれに異なる特別な一日を過ごす皆さんの足取りが少しでも軽くなるように祈っています。
(たかとら)